★ 23:2型糖尿病の発症予防 ★
(科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013)
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◎科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013
01.糖尿病診断の指針
02.糖尿病治療の目標と指針
03:食事療法
04:運動療法
05.血糖降下薬による治療(インスリンを除く)
06.インスリンによる治療
07.糖尿病網膜症の治療
08.糖尿病腎症の治療
09.糖尿病神経障害の治療
10.糖尿病足病変
11.糖尿病と歯周病
12.糖尿病大血管症
13.肥満を伴う糖尿病
14.糖尿病に合併した高血圧
15.糖尿病に合併した脂質異常症
16.妊婦の糖代謝異常
17.小児・思春期における糖尿病
18.高齢者の糖尿病(骨代謝を含む)
19.糖尿病における急性代謝失調
20.糖尿病と感染症、シックデイ
21.糖尿病と膵臓・膵島移植
22.糖尿病の治療指導・患者教育
23:2型糖尿病の発症予防
24.メタボリックシンドローム

◎ 糖尿病対策
 その基礎知識の為の啓蒙資料








私は“これで”救われました

仕事の関係でどうしても休めず、ワラにもすがる思いで飲み続けました
◎ステートメント

1.2型糖尿病の発症予防のためのスクリーニング
 糖代謝異常を有するものは、糖尿病発症のハイリスク群である。一方、年齢が45歳以上か、それ未満であっても肥満者で、運動不足、糖尿病の家族歴、妊娠糖尿病か巨大児出産の既往、高血圧、脂質代謝異常、多嚢胞性卵巣症候群、インスリン抵抗性をきたす疾患、心血管疾患や耐糖能異常の既往を併せ持つ場合は、定期的に血糖検査を受けるように勧告されている。(グレードA)

2.生活習慣の指導
 耐糖能異常と過体重・肥満を有するハイリスク群では、総摂取エネルギー量を適正化し、生活習慣の改善により体重を5から10%減らすことが推奨されている。(グレードA)
 さらに食物繊維を多く含む未精製穀物類や低glycemic index(GI)食品、緑色野菜、魚などの食品は糖尿病予防効果があることが示唆されている。(グレードA)

3.運動習慣の指導
 ウォーキングなどの有酸素運動を週に150分以上行う。(グレードA)
 運動は、体重減少とは独立して糖尿病発症を予防する。(グレードA)

4.嗜好習慣とその他の指導
 喫煙は糖尿病発症の独立したリスク因子である。(グレードD)
 少量から中等量の飲酒は糖尿病発症を減少させるが、痩せ形の日本人では、中等量の飲酒でも糖尿病発症のリスク因子になるとの報告があり、飲酒する場合には適量(純アルコールで1日25g程度)にとどめるべきである。(グレードB)
 コーヒー摂取は糖尿病発症の予防因子である可能性が高いが、指導に取り入れるまでのコンセンサスは得られていない。(グレードC)
 睡眠時間やうつ病と糖尿病発症との関連も指摘されている。(グレードB)

5.薬物による予防研究
経口血糖降下薬(ビグアナイド薬、αグルコシターゼ阻害薬)と一部の抗肥満薬、降圧薬、脂質異常治療薬、女性ホルモン補充療法において、糖尿病発症の予防作用が報告されている。しかし、長期的な安全性が問題視される薬剤もある。(グレードB)

◎解説


2.2型糖尿病の発症に関連した生活習慣
1)肥満
 肥満は糖尿病発症と強く関連し、BMI 22から25の過体重も糖尿病発症リスクを増加させる。現在の肥満だけでなく、過去の最大体重や成人後の体重増加も糖尿病発症のリスク因子となりうる。さらに、出生時の体重が低い者では、その後の糖尿病リスクが高いことが報告されている。よって、糖尿病予防には生涯にわたる体重管理が必要である。また、腹囲径やウエストヒップ比は、BMIと独立した糖尿病のリスク因子であることが報告されている。端野・壮●町研究でも、腹囲径が男性85cm以上、女性90cm以上の腹部肥満は糖尿病発症のリスクを2.6倍上昇させ、その関係はBMIと独立していた。一方、IFGまたはIGTの耐糖能異常を有する過体重・肥満者が減量すると糖尿病発症のリスクが減ることが報告されており、体重を5から10%減らすことが推奨されている。

2)食事
 エネルギーの過剰摂取は糖尿病発症と密接に関連する。また、栄養素やそれらを含む食品の糖尿病発症への影響も示されている。日本人対象者を含むメタアナリシスにおいて、白米の摂取と糖尿病発症リスク増加に量反応関係が認められており、米飯(精白米)1杯158g増加する毎に、糖尿病発症リスクが11%上昇すると報告されている。ただし、低炭水化物食の糖尿病発症の予防効果については、一定の見解が得られていない。一方、食物繊維、未精製穀類の摂取や低GI食品は糖尿病発症を減少させる。またメタアナリシスにおいて、緑食野菜の摂取を1日約120g増加させると、糖尿病発症リスクが14%(3から23%)減少することが示されている。メタアナリシスでは、1日あたり100gの赤身肉の摂取は発症リスクを19%(4から37%)、赤身肉加工品50gの摂取は51%(25から83%)、それぞれ上書させると報告されている。2つのメタアナリシスにおいて、魚の摂取量と糖尿病発症リスクの関連には地域差が認められ、日本人を含むアジア人を対象とした研究においては、n-3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取と糖尿病発症リスク低下の関連が認められている。日本人を対象とした研究では、男性において、魚介類の摂取量が多い程糖尿病発症リスクが低下する傾向が認められた。同部製志望に多く含まれる飽和脂肪酸、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は糖尿病発症のリスク因子であると報告されている。ビタミンD、カルシウム、マグネシウムは糖尿病発症を抑制するとされているが、セレンはむしろそのリスクを増加させるとの報告がある。ただし、糖尿病予防の目的でこれらの栄養補助食品を摂取することは、科学的根拠が未だ不十分であることから推奨されない。

3)身体活動
 テレビの視聴時間が長いなど身体活動量が低下している者では、肥満や糖尿病の発症リスクが高い。一方、定期的な運動は糖尿病の発症リスクを減少させ、IGTから糖尿病への移行率を有意に低下させる。日本人男性における調査では、仕事・通勤などの日常的な身体活動量が多い者では、少ない者よりも2型糖尿病リスクが27%低かった。メタアナリシスによると、中程度(3.0から6.0EMTs)の定期的な運動は糖尿病発症の相対リスクを0.69と有意に低下させ、その効果は体重減少の程度と独立していた。糖尿病の予防には、ウォーキングなどの有酸素運動を週に150分以上行うことが提言されている。

4)嗜好品
 喫煙は糖尿病発症のリスク因子であり、量反応関係も認められる。我が国の地域住民の追跡研究によると、喫煙者の糖尿病発症の相対リスクは男性1.3、女性1.4と有意に高かった。喫煙に伴う体重増加は、短期的には糖尿病リスクを増加させる可能性があるものの、日本人男性において、喫煙は、短期的(5年未満)には糖尿病発症リスクを増加させ、一方、長期的には低下させたことが報告されている。飲酒に関する我が国の職域調査では、耐糖能異常の発症リスクは、飲酒量(エタノール換算)23.0から45.9g/日の群でもっとも低く、この群に比べ0g/日の群では1.5倍69.0g/日以上の群では1.4倍といずれも有意に高く、U-shapeの関係が認められた。一方、我が国の地域住民調査では、BMI22以下の肥満の無い男性における糖尿病発症リスクは、飲酒量0g/日の群を基準とすると、23.0から46.0g/日の群で1.9、46.0g/日の群で2.9といずれも有意に高く、中等量の飲酒も糖尿病発症リスクを増加させた。メタアナリシスによると、少量から中等量の飲酒は糖尿病発症に予防的に働くが、適量を超えた飲酒が糖尿病発症に及ぼす影響について結論は得られていない。よって飲酒する場合には適量(純アルコールで1日25g程度)にとどめるべきである。コーヒー摂取のメタアナリシスによると、その摂取量と糖尿病発症には負の用量反応関係が認められ、6杯以上/日の群の相対リスクは2杯以下/日の群に比べ0.65であった。日本人男女における調査では、コーヒー3杯以上/日の群の相対リスクは、特に女性において0.63と有意に低かった。さらに我が国では、緑茶も糖尿病発症に対し予防的作用を有することが報告されている。

5)その他の生活習慣・精神的要因
 睡眠時間や睡眠の質、夜間のシフト勤務などの生活習慣も、糖尿病リスクと関連する。精神的ストレスやうつ病がある者では、糖尿病発症リスクが高い。また、うつ病と糖尿病との間には、双方向の因果関係が認められている。




3.2型糖尿病発症の予防研究
1)生活習慣改善による2型糖尿病発症予防 糖尿病の発症予防に関する生活習慣の介入試験には、Finish DPS(フィンランド)、DPP(Diabates Prevention Program,米国)、Kosakaら(日本)、CDQDPS(Da Qing研究、中国)、IDPP(インド)のIGT集団の介入研究報告がある。これらの研究介入群における糖尿病発症の relqtive risk reduction(RRR)は、対照群に比べそれぞれ58%、58%、67%、51%と29%であった。メタアナリシスの結果でも、RRRは49%とおよそ半数の被験者に予防効果があることが示された。さらにDPP介入終了後の長期追跡調査(Diabates Prevention Program Outcomes Study : DPPOS)の結果において、生活習慣介入は、少なくとも10年間は糖尿病の新規発症を抑制する可能性が示された。Da Qing研究(中国)や Finish DPS における介入試験終了後の追跡調査の結果でも同様に、生活習慣への介入を終えた後も予防効果は持続していた。日本人において、IFG集団に対する生活習慣改善も、2型糖尿病発症予防につながることが示された。糖尿病に戦略研究J-DOIT1 において、生活習慣改善による2型糖尿病予防に関する我が国のエビデンスが蓄積されつつある。

2)薬物による2型糖尿病発症予防
 ●2型糖尿病の発症抑制効果の検討を目的とした研究
 経口血糖降下薬のボグリボース(40.5%)、アカルボース(25から36%)、メトホルミン(31%)については糖尿病発症抑制効果が報告され、日本では心血管疾患ハイリスクのIGTに対してボグリボースの投与が保険適用となった。ただし、服用終了後の効果持続については、アカルボースでは認められていない。ピオグリタゾン投与によりプラセボ群と比較して、IGTから糖尿病への進展リスクが72%低下したという報告もあるが、同時に有意な体重増加と浮腫の発現を伴った。DPPOSではメトホルミンによる発症抑制効果は10年後も持続したが(RRR 18%)、薬物介入よりも、生活習慣改善による持続効果の方が大きかった(34%)。概して生活習慣への介入は薬物に比べ予防効果が高い可能性もあるが、人的資源を必要とし医療費がかさむ問題点があり、低コストの介入方法の開発が望まれる。

 ●その他の薬物による介入研究
 その他の薬物による介入については、降圧薬、抗肥満薬、脂質異常症治療薬、女性ホルモン補充療法に関する報告がある。降圧薬のメタアナリシスによると、利尿薬と比較して、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(RRR 43%)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(33%)カルシウム拮抗薬(25%)では有意な糖尿病の予防作用が確認された。スタチンにより糖尿病発症リスクが上昇する可能性が示唆されているが、同薬による心血管イベントリスク抑制効果を上回る程ではないと指摘されている。脂質異常症治療薬のベザフィブレート(30%)と抗肥満薬のオルリスタット(37%)は糖尿病発症率を有意に減少させることが報告されている。




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